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クリスタルのかけらに眠る勇者の心

クリスタルのかけらに眠る勇者の心

名探偵木更津悠也

「名探偵木更津悠也」麻耶雄嵩

>名探偵 木更津悠也

このような表現が適切かどうかはさておき、麻耶雄嵩の場合、長編は、ラストまでまともなもの
はほとんどなく、「ぎゃ、やられた!」という嬉しい悲鳴が常につきまとう。
一方、短編となると、メルカトル鮎にしろ、木更津悠也にしろ、まともなのは何故だろう?
短いストーリーの中に驚愕の仕掛け、破綻スレスレのエンディングを入れることが難しいのか?
白幽霊、禁区、交換殺人、時間外返却の4編が収録。
「白幽霊」
何と言っても、この木更津シリーズの特徴は、通常のパターンでは、単なる記
述釈迦ボケ役となるはずであるワトソン役の香月実朝がただ者ではな
い、ということだ。デビュー作「翼ある闇」をお読みの方なら、どういうことかよく判るだろう
。真相に迫りつつある木更津に、香月が最後のプッシュをするシーンが出てくるが、全てを判っ
た上で、探偵に真相を悟らせ、語らせるなんて格好いいじゃないか。

「禁区」
高校の文芸部内で発生した殺人事件の犯人とは?アンフェアだ、という批判は当然覚悟の上だと
思うが、叙述トリックでもないし、文章の読解力で読者がどれだけ情景をイメージできるか、と
いうのがトリックになっている。
映像化されていれば、犯人はすぐ判るのに。

「交換殺人」
別のアンソロジーで読んだけど、内容を完全に忘れていたので、新鮮な(?)気持ちで読めた。
今回も、木更津の思考を後押しするのは、香月だ。
その二人の関係が面白い。

「時間外返却」
読者のミスリードを誘うような仕掛けもある。奇想天外なトリックというものはないが、意外な
犯人ということでは、やられた、というカンジだ。

全編に共通して登場?する幽霊の正体は明らかにされないまま完結しているようだ。名探偵とそ
の上を行くワトソン役の香月、というパターンに、事件の本質とは異なった+αの面白さがある。


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